確定拠出年金はDCという略語で今回も進めます。
■確定拠出年金 : DC :Defined Contribution Plan
■企業型確定拠出年金 : 企業型DC
■個人型確定拠出年金 : 個人型DC
■■このページの目次■■
1.確定拠出年金。個人型と企業型、ここが異なる
実施主体はどこ
加入できる人は?
掛金はだれが出す?
運用するのはだれ?
掛金の金額は
個人型DCの拠出限度額
2.確定拠出年金の落とし穴【マッチング拠出とポータビリティ】
マッチング拠出。メリットそして落し穴
まずは簡単に整理しておきましょう。
企業型DCは
・実施している企業に勤務している人が加入します。
・掛金は企業が全額負担。
・口座管理費も企業が負担。
・掛金の額は企業が決める。
・マッチング拠出で上乗せ分は所得控除。
個人型DCは
・企業年金制度の無い会社員や自営業者が加入。
・専業主婦、公務員、企業年金を実施している企業の会社員も(2017年から)対象。
・掛け金の額は加入者が設定。(上限額有り)
・掛け金は全額所得控除
1.確定拠出年金。個人型と企業型、ここが異なる
実施主体はどこ
企業型DCは企業型年金規約の承認を受けた企業が実施します。
個人型DCは国民年金基金連合会が実施します。
●運営管理機関:年金制度を運営する機関で確定拠出年金(DC)の窓口。
企業型DCは企業が、個人型DCは国民年金基金連合会が選任。
主な業務は「運用関連業務」、「記録関連業務」。
加入手続き、運用商品の紹介、アドバイスさらに実際の給付手続き業務や運用における教育などをなどを行います。現在の運用実績を知ることもできる。
加入できる人は?
企業型DCに加入できるのは実施企業に勤務する社員です。
個人型DCは、
・自営業者や、
・企業型年金や確定給付年金の加入対象になっていない会社の社員。
・2017年(平成29年)からは、
専業主婦や企業年金加入者、公務員なども加入できるようになりました。
掛金はだれが出す?
確定拠出年金の「拠出」とは掛金を出すことを意味します。
企業型DCでは企業(会社、事業主)が拠出します。
規約に定めた企業の場合は、加入者個人の拠出ができます。これについては後述します。
個人型DCは加入者個人が拠出します。企業は拠出できません。
運用するのはだれ?
企業型DCも個人型DCも、
加入者自身で運用商品(預貯金、保険商品、投資信託など)を選び運用します。
掛金の金額は?
企業型DCの拠出限度額は
確定給付年金(DB、厚生年金基金など)を実施していない企業の場合は
⇒ 月額55,000円。
確定給付年金(DB、厚生年金基金など)を実施している企業の場合は
⇒ 月額27,500円。
個人型DCの拠出限度額は
たとえば
自営業者等が ⇒ 月額68,000円。
専業主婦では ⇒ 月額23,000円。
■↓■個人型DCの拠出限度額■↓■
加入対象者 | 拠出限度額(年額) | (月額) |
---|---|---|
自営業者 |
81万6千円 | 6万8千円 |
企業年金の無い会社の社員 |
27万6千円 | 2万3千円 |
専業主婦等 |
27万6千円 | 2万3千円 |
企業型確定拠出年金加入の会社員 |
24万円 | 2万円 |
企業型確定給付年金のみ加入の会社員 |
14万4千円 | 1万2千円 |
公務員等 |
14万4千円 | 1万2千円 |
2.確定拠出年金の落とし穴【マッチング拠出とポータビリティ】
マッチング拠出。メリットそして落し穴
マッチング拠出は企業型DCに税制優遇を取り入れた仕組みです。
2012年にスタートしました。
企業型DCの加入者が、事業主が出した掛金に上乗せして拠出できるのが
「マッチング拠出」の制度です。
マッチングして上乗せした分は所得控除の対象になります。
マッチング拠出の上限額は会社の掛金と合計して
月額55,000円を超えることはできません。
確定給付年金DB(企業年金)を併用している場合は月額27,500円が上限となっています。
また、加入者本人の掛金が会社の掛金の額を上回ることはできません。
会社が拠出した金額と分けられずに一体で運用管理されます。
先ほど申しましたが、
マッチング拠出では加入者の掛金は個人型DC同様に全額所得控除の対象となります。
また運用益も全額非課税です。
■例を挙げてみましょう。
●Aさんの例: 給与が月20万円。所得税10%、住民税10%、合計税率20%。
毎月1万円(年間12万円)をマッチング拠出した場合。
■マッチング拠出した月額1万円は給与所得から控除されますから、
課税所得は月額19万円となります。20%の税金が引かれて15万2千円が手取りです。
■Aさんがマッチング拠出しない場合ですと、
課税所得は20万円のままですから、20%(4万円)の税引き後手取りは16万円です。そこから貯蓄として1万円積み立てると残りは15万円です。
Aさんの例ではマッチング拠出した場合としない場合、
その差は月2千円、年間2万4千円あります。
年間12万円の拠出で2万4千円の節税効果です。利回りでいえば20%ということになります。
さらに申せば、マッチング拠出をせずに課税後所得からの資産運用は、収益への課税などの場合も含め、税制面では不利ということになります。
マッチング拠出
ここが落し穴
マッチング拠出による節税効果はたしかに否めないところです。
とはいえ、たとえば「住宅ローン返済中」の方などは繰り上げ返済に回した方がよりお得になるケースなどもありますから、個々人のシミュレーションが必要でしょう。
場合によっては
マッチング拠出の金額を見直しつつ運用
3.ポータビリティ。年金資産の持ち運び。ここにも落し穴
portability,持ち運びのできることですね。
スマホや携帯などで、電話番号を代えずに他のキャリアに移動できることを番号ポータビリティと言いますね。
確定拠出年金のポータビリティは、
転職や退職時に、今まで積み立ててきた年金資産を持ち運んで継続運用ができることです。
企業型DCから⇒企業型DCへのポータビリティ
●企業型DCに加入していた人が、
企業型DCのある会社に転職。
↓
この場合は転職先の会社が掛金を拠出して運用を継続。
企業型DCから⇒個人型DCへのポータビリティ
●企業型DCに加入していた人が、
企業型DCも企業年金もない会社に転職する。
あるいは求職活動中。
専業主婦(夫)になった。
自営業を始める。
これらの場合は、↓
個人型DCへ資産を移して運用を継続できます。
個人型DCへ移るわけですから加入者本人が掛金を出すことになります。
また、運用期間中の手数料などは自身で負担します。
個人型DCから⇒企業型DCへのポータビリティ
●個人型DCに加入していた人が、
企業型DCのある会社に転職。
↓
個人型DCから企業型DCへ移し一元化することが必要です。
※転職先が企業年金を実施していても、
それが企業型DCではなく、
確定給付企業年金や厚生年金基金の場合には、
個人型DCのまま継続することになります。
他の企業年金から ⇒ DCへのポータビリティ
●転職・退職時に一時金を受取る権利がある場合※は、
→ 転職先の企業型DCへポータビリティ。
または
→ 退職後、個人型DCへポータビリティ。(脱退一時金同額)
※前の会社で確定給付企業年金に加入の退職一時金、あるいは 厚生年金基金に加入、プラスアルファ部分の一時金を受ける権利など。
※すでに年金受給の権利がある場合はポータビリティができない。
自動移管。ここに落とし穴!
自動移管という措置についておはなしします。
ここで「移管」というのは年金資金を移すことを言います。
■要注意!
退職によって企業型DCに加入できなくなった人がそのまま、
個人型DCへのポータビリティの手続きをせずに、
6ヶ月が過ぎますと「自動移管」されてしまいます。
つまり、6ヶ月が過ぎますと自動的に、
国民年金基金連合会へ資産のポータビリティが行われます。
これが自動移管です。
自動移管された資産は国民年金基金連合会で現金として処理され運用はできません。
運用ができないので利息はつきません。
自動移管されている期間中は、手数料もかかってしまいます。
その後、個人型DC口座に資産を移す際にも費用がかかります。
以上2016年9月・記
以下次回
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