■■■■■■■■■■■このページの目次■■■■■■■■
- 確定拠出年金のおさらい
- 確定給付年金と確定拠出年金
- 改正前・現行の確定拠出年金
- 個人型と企業型の違い。現行制度
- 確定拠出年金法改正案が成立・2017年からは、どうなる?
- 確定拠出年金加入対象者
- 確定拠出年金のメリット
- 1.掛金の全額が所得控除(非課税)に!
- 2.運用期間中の運用益も非課税!
- 3.受取り時の税優遇・給付金も控除の対象!
- 確定拠出年金のデメリット/落とし穴
- デメリット・その1 原則、60歳まで引き出せない
- デメリット・その2 手数料がかかる
- デメリット・その3 最終受給金額が確定しない
- デメリット・その4 運用は自身でおこなう
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2016年5月24日に「確定拠出年金法改正案」が成立しました。
2001年にスタートした確定拠出年金は日本版401kと期待されていましたが、
加入資格者であっても、利用している方はきわめて少ないのが現状です。
今回の改正案成立では、だれでも税制優遇のチャンスあり、となりました。
そのメリット、デメリット、落とし穴を探ってまいりましょう。
第1回は確定拠出年金法(DC法)改正案の基本をお話しします。
確定拠出年金って? おさらい
■■確定給付年金と確定拠出年金■■
確定給付年金は
将来の目標受給額を確定しておき、
そのための掛金を現役のうちに支払うという年金制度です。(賦課方式)
一方、
確定拠出年金は
掛金を確定して拠出、
拠出した資金を運用することによって、
老後に給付を受けるという年金制度です。
運用ですから受給額は定まっていません。(積立方式)
確定拠出年金は
国民年金や厚生年金などの公的年金に上乗せする私的年金です。
民間の金融機関が運営する、いわば金融商品です。
でありますが、これまで金融機関はさほど力を入れていなかった印象があります。
またこの制度の加入資格者でも、利用している方はきわめて少ないものでした。
それは専業主婦や公務員は加入できないなどという
対象者が限られていることが、不人気の原因のひとつといわれてきました。
改正案はその不人気を払拭させることになるのか、検証してまいります。
■■改正前・現行の確定拠出年金■■
改正前、つまり現行の制度をかいつまんで申し上げておきましょう。
日本の年金制度は、
・基礎年金(1階)
・厚生年金(2階)
のいわゆる2階建年金が基本ですが、
厚生年金基金に加入している企業は
・企業年金(3階)
をもって3階建となっています。
その企業年金は確定給付年金(規約型企業年金と基金型企業年金の2種類※)という
将来の給付額が定められているものです。
※規約型:事業主と従業員双方で定めた年金規約に基づいて、外部の保険会社や信託銀行等に掛金を拠出します。外部の保険会社や信託銀行等はその資金を管理・運用して年金給付を行うものです。
※基金型:「企業年金基金」という別法人を作り、その別法人が年金資産の管理・運用をして年金給付を行うものです。
もし、企業年金の運用が芳しくないことになりますと、
その穴埋めのため企業の経営にも影響が及ぶことになるかもしれません。
そこで、「確定拠出年金」(企業型、個人型)の導入ということになります。
確定拠出年金は加入者が運用方法を選択して、その運用により給付額が決まるものです。
加入者自身が資産を運用しますから、給付額は一定ではありません。運用結果によって給付金額は変化します。
■■個人型と企業型の違い。現行制度■■
企業型、個人型があると申しましたが、
個人型は個人が任意に加入し、自ら掛金を拠出するものです。
企業型は企業が導入し企業が掛金を拠出します。(規約で定めてあれば個人で拠出できる場合もあります。)
両方に重複しての加入は出来ません。
個人型の加入者は、これまで自営業者の方などに限られていました。
平成29年1月からは、
企業年金を実施している企業の従業員や公務員、
あるいは専業主婦なども加入できるようになります。
↓この表は現行制度です.。2017年からの制度はのちほどご説明します。↓
個人型確定拠出年金 |
企業型確定拠出年金 |
|
---|---|---|
加入対象者 | 公務員や専業主婦を除く |
|
●自営業者等(国民年金第1号被保険者) |
確定拠出年金制度を実施する企業の従業員 | |
運営費用 |
加入者本人が負担 |
会社負担。 |
運用 | 加入者本人 |
|
資格喪失年齢 | 60歳 | 60-65歳 |
受給開始 |
●老齢給付金:通算加入者等期間により60歳〜65歳から受給開始可能 |
上の表にも記したように確定拠出年金 個人型に
加入できるのは企業年金等の対象になっていない企業に勤める従業員や、あるいは個人事業者等に限られていました。
専業主婦や公務員は現行の規定では加入できないことはお伝えしたとおりです。
その辺りが今度の改正で大きく変わろうとしています。
↘下へつづく
確定拠出年金法(DC法)改正案が成立
それでは
2017年1月から運営される、
確定拠出年金法(DC法)の改正点などを見てまいりましょう。
確定拠出年金個人型を中心にお話しを進めてまいります。
■■ 確定拠出年金加入対象者■■
2017年から
専業主婦や公務員も確定拠出年金を利用できるようになりました。
また今までの
確定拠出年金以外の企業年金の加入者も、含まれることになりますから
その対象者数は約6千700万人にのぼります。
今までの対象者は約4千100万人。2千600万人が増えることになります。
ーー■確定拠出年金加入対象者■ーー
現在
勤務先に企業年金が無い会社員
自営業者
自営業者の主婦
学生
2017年から追加
公務員
勤務先に企業年金がある会社員
主婦(主夫)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
20歳から60歳未満のほとんどの方が確定拠出年金の加入対象者となるのです。
いわば、すべての現役世代が加入できる、ということになります。(公的年金加入者)
確定拠出年金の加入者は現在約500万人ですが、
この改正で現在の2倍の加入者となる見込みのようです。
と申しますのは、NISA(少額投資非課税制度)の加入者が約1千万人あり、
厚労省は同程度の加入をめざしているのだそうです。
(NISAと比べてのメリッット、デメリットが気になるところですが
NISAと確定拠出年金の比較は、のちほど詳しくお話します。)
確定拠出年金のメリッ
個人型・確定拠出年金は3つの時点で税制上のメリットがあります。
1.投資時(拠出時):掛金全額控除
2.運用時:運用益非課税
3.給付時:退職所得控除(一時金)、公的年金等控除(年金形式受取)
これらの税制上のメリットを順にご説明してまいります。
■■1.掛金の全額が所得控除(非課税)に!■■
確定拠出年金は毎月一定の掛金や運用方法を設定するのですが、
掛金の全額が所得控除となり、所得税・住民税の対象から除外されます。
(会社が拠出した掛金も、本人が拠出した掛金も非課税)
自身の老後のためにお金を積み立てていると、
住民税や所得税が軽減されるということですね。
掛金が多いほど節税効果が高いということになりそうですが、
掛金の上限が対象者ごとに決められています。
◉掛金の上限
掛金の上限は↓
加入対象者 |
拠出限度額 (年額) |
---|---|
自営業者(第1号被保険者) | 81万6千円 |
企業年金の無い会社の社員(第2号被保険者) | 27万6千円 |
専業主婦等(第3号被保険者) | 27万6千円 |
企業型確定拠出年金加入の会社員(第2号被保険者) | 24万円 |
企業型確定給付年金のみ加入の会社員(第2号被保険者) | 14万4千円 |
公務員等(第2号被保険者) | 14万4千円 |
ーーーーーーー
限度額は年単位ですから、
残高不足の月があっても、後で差額分を支払うことが出来るようになりました。
◉a.
例えば税率20%の会社員が
掛金年間上限額27万6千円(月額2万3千円)すべて払込みの場合
↓
276,000円×0.2=55,200円
年間5万5千2百円の節税となります。
◉b.
同じく税率20%の会社員が
毎月1万円(年間12万円)拠出の場合でしたら
120,000円x0.2=24,000円
年間2万4千円の節税です。
◉c.
こんどは税率50%という高収入の自営業者を想定してみます。
上限の81万6千円を拠出すれば、
816,000円x0.5=408,000円
年間40万8千円の節税となります。
実際には口座管理手数料などがかかりますから、
額面通りとはまいりません。
例えば◉b.の例で
月550円の手数料がかかる商品でしたら、
1万7千4百円の節税効果ということになります。
24,000円-550円x12月=17,400円
それでも非課税のメリットは見逃せません。
確定拠出年金での投資信託の運用なら、
運用時の手数料は一般的に通常より低くなっています。(金融機関により異なりますが。)
■■2.運用期間中の運用益も非課税!■■
運用によって得た収益(利息・配当・分配金・売却益等)すべて非課税。
株式投資、投資信託、FXなど一般の金融商品で得た利益には、税金がかかります。
NISA(少額投資非課税制度)は年間120万円の投資枠まで非課税ですが、
5年間という期間が定められています。
(■■NISAと確定拠出年金比較 (準備中近日公開)■■)
確定拠出年金は、
今持っている運用商品を売却・解約して他の商品に買い替えることによる利益確定が認められています。(スイッチング)
つまり運用中でも商品の入れ替えが出来ます。
また金額の変更、投資配分の変更も出来ます。
しかし商品の選び方は重要なことです。加入時点から慎重に行わなければなりません。
運用はすべて自己責任となります。
年金を受け取るまで 安全な運用 を心がける必要があります。
■■3.受取り時の税優遇・給付金も控除の対象!■■
◉給付金に対する税金
給付時(受給時)の税制上メリットについてご説明します。
給付金を受取る際に課せられる税金は、
給付金の種類や受取り方法によって取扱いが異なります。↓
給付金別 課税方法 | |
---|---|
老齢給付金(年金受取) | 雑所得として、公的年金等控除の適用 |
老齢給付金(一時金受取) | 退職所得として、退職所得控除の適用 |
障害給付金 | 所得税非課税 |
死亡一時金※ | 相続税の課税対象 |
脱退一時金 | 所得税課税 (一時所得扱い) |
※死亡一時金は注意。
死亡後5年以内に死亡一時金の権利の裁定請求を行わないと、
給付金を受取ることができなくなり、
死亡した方の相続財産とみなされます。
◉死亡または障害者となった場合は、年齢に関わらず給付金を受取ることができます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
60歳になったら老齢給付金を受取ることができます。
ただし、60歳から受取れるのは、確定拠出年金制度に通算して10年以上加入していた人です。
通算加入者等期間が10年に満たない場合は、
加入期間の長さに応じて、
次表↓のごとく受取り開始年齢↓が定められています。
通算加入者等期間 | 請求可能年齢 |
---|---|
10年以上 | 60歳以上61歳未満 |
8年以上 | 61歳以上62歳未満 |
6年以上 | 62歳以上63歳未満 |
4年以上 | 63歳以上64歳未満 |
2年以上 | 64歳以上65歳未満 |
1ヶ月以上 | 65歳以上 |
請求期限は70歳誕生日の2日前まで.
上の表にある通算加入者等期間とは、
加入者が60歳に達した時点での、次の各期間を合算したものです。
- 企業型加入者期間※
- 企業型運用指図者期間
- 個人型加入者期間
- 個人型運用指図者期間
※企業型加入者期間は、
他の企業年金制度から企業型確定拠出年金へ移換した金額がある場合、
移換金額の算出根拠となった期間も合算。
確定拠出年金のデメリット・落とし穴
お話ししてまいりましたように、
確定拠出年金の最大メリットは 節税です。
すなわち 非課税の3点セットです。
◉掛金は、全額所得控除
◉運用時には、運用益が非課税
◉受給時には、公的年金等控除(年金)、退職所得控除(一時金)
と、よいこと尽くめばかりのようです。
これは、『やらないわけにはいかない』ということになりませんか。
ちょっと待ってください。
確定拠出年金はどこかに落とし穴が潜んでいるのではないのか。。。
デメリットを探ってまいりましょう。
✔ デメリット・その1
原則、60歳まで引き出せない .
確定拠出年金の目的は老後資金ということですから、
60歳まで引き出せないのは、
むしろメリットではないかという方もいらっしゃいましょう。
しかし、もしものときにも60歳まで引き出せないというリスクは、
重々念頭に置いて運用を心がける必要があります。
たとえば、急にからだが悪くなって収入が見込めなくなった時などに、
子どもの教育費や住宅ローンの負担が身にしみますね。
そのようなときにも積立金を取り崩して利用すことは出来ません。
(脱退一時金を受け取るには限定的な要件が有り。)
メリット・デメリットは表裏一体なことでありますから、
以下にお話しするデメリットについても同様なことがいえます。
✔ デメリット・その2
手数料がかかる
確定拠出年金個人型の口座開設手数料は、加入時に通常2〜3千円がかかります。
(国民年金基金連合会へは初回2,777円)
運用期間中には手数料がかかります。金融機関(運営管理機関)によって異なりますが
毎月5〜600円程度でしょうか。(口座管理料手数料、年間0円という金融機関もあります)
手数料などは他の金融商品より比較的低いのですが、60歳まで払い続けることとなりますから、かなりの金額になる方もおいででしょう。
✔ デメリット・その3
最終受給金額が確定しない
運用次第で受け取る金額が異なります。
確定拠出年金は給付年金や年金保険などとは違い、
受取る金額が決まっていません。
運用期間中の時点では60歳になったらいくらもらえるのかわかりません。
60歳以降に資産残高や加入期間などに応じて決まります。
✔ デメリット・その4
運用は自身でおこなう
積立金(拠出金)は金融商品(金・投資信託・保険など)で運用します。
その運用は加入者自身の責任でおこなわれ、運用成績は変動します。
運用の結果は自己責任です。
リスクを伴わない投資はありません。
一般的に、大きいリターンを望めばその分リスクが高くなると言えましょう。
運用を有効に活用できることが重要ですが、
そのための学習を怠るわけにはまいりません。
リスクを極力抑え元本割れを防ぐために、掛金は定期預金でよい、
という方法を選ぶ方もいます。
確定拠出年金はどの商品でも運用益に税金がかかりません。
定期預金を選んでも金利に税金がかかりません。
それでもインフレによるリスクは伴います。
すべて自身で判断しなければなりません。
運用方法を自身で選べることは、
むしろメリットであると捉える方もいらっしゃいます。
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斯くして確定拠出年金は2017年から、
国民年金保険料を免除されている低所得者をのぞくほとんどの人が対象となります。
あたかも、『これからは公的年金だけに頼るな、自己責任で!』と宣言されたような気がしませんか。
となれば、安心で安全な資産運用を自ら学ぶ他はなさそうです。
がんばりましょう。
つづきは 近日投稿予定
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