外貨建て投資のリスクと分散
外貨建て投資の関心が高まっています。
昨今の歴史的な円高が背景にあるのは自明であります。
ましてインターネットの時代、世界中の通貨が身近に感じられるのでありましょう。外貨建て投資もネットでの取引が趨勢となってきつつあるようです。
そこで、外貨建て投資を始めようとお考えの方に、主な通貨の特徴と、
外貨建て投資のリスクを、今一度確認なさっておくことをおすすめいたします。
● 外貨投資のリスクとメリット
■外貨投資のメリット
・為替差益:為替レートの変動によって生じる利益。
例えば、円高の時点で外貨に交換して預けます。投資先の通貨が高くなって、
円安になれば差益がえられることになります。
1ドル=105円→《円安》→1ドル=110円・・・5円の差益
・高利回り:日本にはない、高い利回りの商品があります。
■外貨投資のリスク
各金融商品、個々のリスクはそれぞれあるのですが、
共通して「リスク」といえるのは次の2つです。
《為替変動リスク》と《カントリーリスク》
為替変動リスクは為替差損によるリスクです。
為替変動から生じた損失のことで
外貨投資のメリットの項で挙げました為替差益の逆です。
カントリーリスク。投資通貨国の国内情勢によって、
起こりうるのがカントリーリスクです。
近頃は新興国や資源国の経済成長を見込こんでの、投資商品が目立ちます。
しかし、新興国資源国ならではのリスクを考えておく必要があります。
新興国の中には通貨高を抑制するために、頻繁に相場介入することがあります。
あるいは貿易保護をはかって、通貨取引を制限している国もあります。
このような場合直ちに円に換えられなかったり、
為替差益がすぐに確定ができないということも起こり得ます。
為替相場の変動が大きいということも考慮しなければなりません。
資源国の通貨はその資源の価格高騰下落によって、大幅に変動することがあります。
● 資産運用・外貨投資のリスク分散
外貨建て金融商品には人気のFXをはじめ、いくつかの種類があります。
人気や評判に惑わされることなく、商品や通貨を見極めて分散を考える必要があります。
外貨預金は国内預金では得られない「高金利」や「為替差益による高い収益性」を期待することができます。
またその一方では、多様なリスクを持った商品でもあります。
先ほど外貨投資のリスクとして
《為替変動リスク》と《カントリーリスク》の2つのリスクをあげましたが、
次の3種のリスクに分ける見方もあります。
《信用リスク》・・・金融機関破綻の場合、元本や利息はその金融機関の財産状況に応じて支払われます。
《為替リスク》・・・為替手数料がかかります。為替の変動により損をする危険があります。
《インフレリスク》・・・インフレによって、資産の実質価値が目減りすることがあります。
これらのリスクを考慮して、どのような投資商品でご自身の資産運用をするのか、
割り振りを定めましょう。
通貨に関しては、一般に先進国通貨は通貨としての取引量が多く流動性は高いものです。
一方新興国通貨は急成長や高金利が望めるといった特徴があります。
通貨をお選びになる際にも、リスクを鑑みて分散投資としたいものです。
● 世界の主な通貨の特徴を比較
以下に、世界の主な通貨の特徴を簡単に纏めてみましたので、
ご参考になさってください。
■ 日本 円 JPY
外貨ではございませんが、ご存知の「円」。
世界中での取引シェアはドル、ユーロに続き第3位。
昨今のように、世界経済が減速気味な局面では投資家がリスク回避に向いて、
買われやすいことになりそうです。
■日本の経済成長率2.9%(IMF・2012年見通しによる)
■政策金利:0〜0.1%
■ 米国 ドル USD
昨今は財政、貿易ともに赤字の拡大我懸念されていますが、
それでも、いわずと知れた「基軸通貨」。つまり世界で最も取引が多いのです。
他の通貨に比して情報量が豊富、かつ値動きは穏やかですから、
トレンドが読みやすいとはいえます。
■米国(ドルUSD)の経済成長率2.7%(IMF・2012年見通しによる)
■政策金利:0〜0.25%
■外貨定期預金 :6ヶ月定期0.05%(citibank HPより※1)
■ 欧州 ユーロ EUR
取引量は米国ドルの次に位置する第2位の基軸通貨。
米ドルとは反対の動きを見せることが多いように感じます。
近頃値動きはやや激しくなってきています。
導入国の経済状況により格差が生じている点が不安材料となりますか。
■欧州(ユーロ EUR)の経済成長率1.7%(IMF・2012年見通しによる)
■政策金利:0〜0.25%
■外貨定期預金 :6ヶ月定期0.20%(citibank HPより※1)
■ 中国 元 CNY
為替レートは中国政府の政策によって決定されています。
現在のところ、基本的に自由な取引は出来ません。
■中国(元 CNY)の経済成長率9.5%(IMF・2012年見通しによる)
■政策金利:6.56%
■外貨定期預金 :6ヶ月定期0.10〜0.25%(HSBC HPより※2)
■ ブラジル レアル BRL
1999年には通貨レアルの切り下げが行われました。
流動性が低い上に安定性を怪訝する向きもあります。
天然資源が豊富な国であることは、好材料です。
■ブラジル(レアル BRL )の経済成長率3.6%(IMF・2012年見通しによる)
■政策金利:12%
■外貨定期預金 :3ヶ月もの定期7.00%(ソニー銀行 HPより 2011年10月30日 ※3)
■ インド ルピー INR
2011年度第1四半期の実質GDP成長率は7.7%に減速したものの、
若年労働層が厚く、2050年までには経済大国になるだろうと予測する専門家もいます。
いずれにしても、さらに高い経済成長が期待されています。
■インド(ルピー INR )の経済成長率7.8%(IMF・2012年見通しによる)
■政策金利:8%
■オーストラリア 豪ドル AUD
世界経済の悪化を受けて2011年は利上げをせず、4.75%の政策金利を保っています。
それでも先進国では高金利です。
農業、鉱業の資源国であるゆえ、コモディティ価格に影響されやすい傾向があります。
■オーストラリア(豪ドル AUD)の経済成長率3.5%(IMF・2012年見通しによる)
■政策金利:4.75%
■外貨定期預金 :6ヶ月定期2.61%(citibank HPより※1)
■南アフリカ ランド ZAR
金、ダイヤモンド、レアメタルなどの鉱物資源国として注目を集めています。
経済的に不安定な面もあり、また新興国通貨は流動性が低く、
ボラティリティ(価格変動率)が激しいといえます。
■南アフリカ(ランド ZAR)の経済成長率3.8%(IMF・2012年見通しによる)
■政策金利:5.5%
■外貨定期預金 :6ヶ月定期2.71%(citibank HPより※1)
上記記事のcitibank数値は執筆時(2011.10.31 09:41)現在のものです
以下のサイトを参考にいたしました。
※1 citibank外貨定期預金の基準金利
http://www.citibank.co.jp/ja/fcy/fcy_regular_tdinterest_rates.html
※2 HSBC Premier 定期預金金利
http://www.hsbc.co.jp/1/2/hsbc-premier-jp/banking/interest-rates
※3 ソニー銀行外貨預金金利一覧
http://moneykit.net/visitor/rate/fd_brl.html →ブラジルレアル定期預金(募集型)
上記以外の通貨について、citibank HPの外貨定期預金の基準金利 から
外貨6ヶ月定期預金の基準金利を写しておきます。(2011.10.31)
■ニュージーランド ドル・・・0.91%
■イギリス ポンド・・・0.11%
■スイス フラン・・・0.01%
■香港 ドル・・・0.01%
■タイ バーツ・・・0.10%
■ノルウェー クローネ・・・0.89%
● 外貨建て金融商品の種類と特徴
外貨建て金融商品の種類と特徴をまとめました。
外貨建て金融商品の種類と特徴 |
|||
名称 |
特徴 |
注意 |
|
為替収益の外貨建て商品 |
fx 外国為替証拠金取引 |
少ない資金で大きな取引が可能 |
為替変動による損失の拡大 |
外貨預金 |
一般の市中銀行で取引できる |
手数料は高め 適用金利低い |
|
外貨MMF |
流動性と安全性が高い 小額資金から運用できる 為替差益分が基本、税金面で優遇 |
利回りが確定しない | |
為替収益+投資の外貨建て商品 |
外国債券 発行者、通貨、発行場所のいずれかが海外の債券 |
金利は高め 長期投資が出来る |
流動性リスク(中途売却で損失の可能性あり) 債務不履行(デフォルト)リスク |
外貨投信 外貨で設定の投資信託 |
地域や業種など分散投資が出来る |
債務不履行(デフォルト)リスク 運用成績が読みにくい |
|
外国株式 海外企業の株式 |
世界の有望銘柄の運用可 株価上昇による収益 |
値動き激しい 外国企業の情報少ない |
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